屋号を商標として出願してみた

在宅翻訳に挑戦し、はじめてのお仕事から13(開業届基準にすると10年目)。その後、屋号も練りに練って自分らしい名前を付けるなど、仕事に愛着をもっています。でも、年数を経るごとに、あることに漠然とした不安が湧いてきました。

この屋号、誰かに登録されて使えなくなったらめっちゃ悲しいな“、と。

ソーシャルメディアで色んな人とつながるからこそ、知らなかったことを発見する日々。語学を扱う個人の方で屋号(または事業名?法人化されてるのかな?)を商標登録しましたという方を以前お見かけし、ずっと気にはなっていた商標登録。登録さえしてしまえば、使っちゃダメって言われることもない。ウェブサイトのドメイン取ってるから順序的に危険は少なさそうとはいえ、ですが。

ということでやってみました商標登録の出願!これから審査なので、今は®︎じゃなくて™️しか使えません。

Sprachgetriebe Consulting™️
Sprachgetriebe™️
SGC™️

なんだか、特別感があります。( ง ᵒ̌∀ᵒ̌)ง⁼³₌₃

これが審査に通り登録に至った場合は、™️の代わりに®︎が付きます。
でも、特にSGCは通らないかも?通って欲しいです!!(>ω<*)

何かで呼称を求められた時以外にカタカナ表記を表で公式に使うことは今までも今後もないので、カタカナの読みでまでは商標登録を出願しませんでした。ま、こんな名前(自分でもそう思う)わざわざカタカナで登録する人はいないと思われます。ドイツ語だから意味があるけど、カタカナになった途端になんだかヘンテコな感じはします。

ともあれ、また一つ、ビジネスに自分らしさを付加できそうです。

出願はPCに専用ソフトをダウンロード・インストールしてオンラインで自分でしてみました。特許庁がブラウザでパッと作れる出願様式も公開してくれているので簡単でした。マイナンバーカードがあって、e-taxしてる方は特に楽のようです。でも操作マニュアルの説明が膨大で、自分に関係する箇所を探すのに苦労しました。弁理士の方とか手慣れてるでしょうけど、素人が紙でしようとしたら半泣きでするような作業ですね…(詳しくはマニュアルをどうぞ…) 

出願手数料は12,000/件。
審査が通った後の登録料が10年なら28,200/件。
合計120,600円。
ま、でも経費ですから。
これを外注でお願いしてたら+1040万円かかるようです。自分、頑張りました!

今年40歳になるので、一度の更新(+10)を視野に20年はこの商標付き屋号と付き合っていけたらいいなと思います。法人化するならたぶん、個人潰して1-1+1ではなくて、+1の純増でハイブリッドビジネスを考えます

人間翻訳と機械翻訳 2 ― 一般ビジネス翻訳を例に考える

前回のブログ投稿から半年近く経ってしまいました。実はこの記事は3月に出したいなと考えていたのですが(今いつよ)、取り上げたい話に使う例文の用意にも時間を取られ、仕事やボランティアも忙しく優先順位は下がるばかり…。やぁっと公開です(例文作成に数か月かけた)。

昨今、兎にも角にも、機械翻訳の台頭と精度向上により、人間翻訳の仕事は減るばかりなのではという話がよく聞かれますね。この時代、そうした中で翻訳を仕事に食べていくにはどういうことができるかなと私もよく考えます。今年の1月に公開した記事では、拙い訳ですが例を交えて、マーケティング分野の一部にあたる翻訳を例に人間翻訳と機械翻訳について比較してみました。その数週間後に受けたトライアル翻訳で、これもその比較に良い例だなというものがありましたので、紹介させてください。今回は一般ビジネス翻訳から、ビジネスレター/メール文を取り上げます。

以下、原文と訳文を掲載していますが、実際に私が受けたトライアル文ではありません。スタイルはそのままに、内容をまったくの別物に作り変えています。訳文はあくまで私なりの訳例です。今回は訳例のほか、機械にはできない文書の体裁調整やビジネスレターの文化も含めて全体を比較してもらえたらと思います。

※マウスオーバーして右クリックし、[新しいタブで画像を開く]を選択すると拡大表示できます。

原文
機械翻訳 Google Translate (参考)
機械翻訳 DeepL (参考)
訳文1
訳文2
訳文2 申し送り付き

訳文1は原文の体裁そのままにただ訳しただけです。すごく読みづらいと思いませんか?その国や企業では普通に受け入れられる体裁なのかもしれませんが、参加して欲しいカンファレンスの参加登録先も文末にあってわかりづらいですね。実際、このような体裁の文面で日本の企業に送っても、読み手は若干のストレスを感じるのではないかなと思います。

そう感じて、私は実際のトライアルの際に、申し送りと共に訳文2のパターンも併せて提出しました。日本のビジネスレターでよく使われる表現を追記してはいますが、まず伝えたい情報を一か所に(開催内容・日時・登録方法等)まとめて、段落も一部変えています。

トライアルにしろ実際の翻訳案件にしろ、人によっては、ここまで口を出すのはやりすぎなのではという方もいらっしゃるかもしれませんが、用途を考えた時に、その目的を果たせない成果物を出すのもそれはそれでどうなのかなと思います。(いわゆるローカライズのアプローチを取り入れた方がいいのか、先方に尋ねてもいいと思います。)だからこそ、どうして訳文2も用意したのかという説明も含めて訳文1と2の両方を提出したわけですが。書いてある情報は同じです。情報を伝えようとするアプローチが異なるだけです。原文と併記で使うのなら訳文1でも十分でしょうが、原文と併記ではなく訳文だけを出すというのであれば、訳文2の方が読み手には伝わりやすいかと思います。使うかどうかは先方が決めることです。

(※訳文2はよくみる定型をイメージして構成していますが、申込方法はリンク先からとあるので、PDFで送るなら有効な体裁ですが、メール本文にただ入れて使用するだけなら、記・以上は不要、中央揃えの箇所は左揃えでも十分かとは思います)

渡す成果物を実際に読む他人が理解できるか。ビジネス文化的に取り入れた方がいい(または取り入れない方がいい)体裁・表現はあるか。私たち人間はそうした物事に対する“判断”ができます。人間翻訳は、こうしたある種の言語・文化コンサルティング的な役割も期待されているからこそ求められているのだと私は思います。機械翻訳は人間では到底無理な量でも瞬時に訳せる力がありますが、できても訳文1のようにただ書いてあることを訳すだけで、その先にある読み手のことを考えたアプローチは(現状)とれません(いつかできるようになるのかな…?)。前回の記事でも少し触れていますが、これも機械翻訳と人間翻訳とで活躍場面が異なる一例かなと思います。CATツールを使用して対応する案件だと、翻訳者は訳すだけでこうした体裁調整の機会がないことも多いのですが、“提案”はしても差し支えません。人間翻訳にこそできる付加価値です。今回はビジネスレター/メール文を取り上げていますが、そうした一見機械翻訳で十分そうなものでも、このように人間の一手間があるからこそよりブラッシュアップされたものを提供できることはあります。私に依頼してくださるお客様の中にはそうした一手間の提案に価値を見いだしてくださっている方もいるのだろうなと思います。あ、ちなみに記事ネタとなったトライアルはもちろん通りました(重要)。

一般ビジネス翻訳を軸に派生する話があるのですが、それはまた次回。

人間翻訳と機械翻訳 ― マーケティング翻訳を例に考える

昨年末頃、エッジ・トランスレーションの三浦由起子代表にお声がけいただき、とても面白いお手伝いをさせていただきました。ご本人が登壇するAAMT Online, 2021公募セッション発表用資料作成で人間翻訳例のご協力をするというものでした。

発表内容は、

  • 機械翻訳には使い方がある 

  →それを基にリスクを抑えつつスピード・効率を上げられる

  • 機械翻訳と人間翻訳はそれぞれに活躍場面(例:情報伝達/訴求)がある 

  →マスの取り合いをするものではなく、マス数自体を増やせる可能性。共存の道を選べる

  というもの。当日発表資料を公開されているので詳しくはこちらをどうぞ。

翻訳例は複数提供させていただいたのですが、そのすべてを公開するお時間はなかったということで、未使用のものについて許可をいただいたのでこちらのブログで発表させていただきます。

※以下、マーケティング翻訳例とありますが、一般向けの記事やIT系企業のブログなどの読み物系、経営層向けのレポート(事例)、ニュースリリース、販促資料、DMなどマーケティング翻訳に該当するものは多岐にわたります。ですので、これはあくまでそれに類するものから取り上げた一例にすぎません。

人間翻訳を考えてみる(マーケティング翻訳例)

原文:The beautiful pixel art was at the top of its class at the time and has lost nothing of its charm over the years.

(引用元:https://www.nintendo.com/en_CA/games/detail/clockwork-aquario-switch/

ざらっとした直訳:

当時最高の美しいピクセルアートは長い時を経てもその魅力を失っていません。

これを機械翻訳にかけた場合に出てくる例はこちらです。

① DeepL:

美しいピクセルアートは当時の最高水準であり、その魅力は何年経っても失われていません。

② Google Translate:

美しいピクセルアートは当時そのクラスのトップであり、何年にもわたってその魅力を失うことはありませんでした。

文引用元のウェブサイトは、約30年前のアーケードゲームがリバイバルされテレビゲームとしてリリースされたソフトを紹介しています。上記直訳か①/②だとなんだか淡々としてますよね。機械翻訳と直訳は似たり寄ったりな表現力で読む側としても、書いてある事実を伝えてるだけという印象。そこでここは人間翻訳の出番。マーケティング翻訳では、読み手に魅力を感じて欲しい、買ってみようかなという気持ちを搔き立てる訴求力ある文章で書こうとしたらどんな表現を提案できるでしょうか。

案1 

あくまでソースに忠実に、ただもう少し読みやすさ・自然さを意識

当時のドット絵アートの集大成。色鮮やかで美麗なグラフィックは二十何年という時を経てもその魅力を失っていません。

案2 

「絵の美しさ」を強調してみる

当時最高峰と言っても過言ではない美麗なドット絵アート。二十何年という長い時を経ても色褪せないグラフィックがプレイヤーを魅了します。

案3

かなり言い換えてもよいと言われた場合の自由翻訳

色褪せない、見惚れる美しさ。当時精魂込めて描きあげられた美麗なドット絵アートが二十何年という時を経てよみがえります。

見てわかる通り、伝えるポイントを少し変えるだけで、1つの原文からスタイルのまったく異なる文を何通りも考え出せます。個人的には案2や案3を読むと、「ほうどんなもんかしら」という気にはなるんじゃないかなと。案3はかなり思い切っているようにみえますが、実はこのゲーム作品について調査をすると、ここまでの事実がでてくる(この日本語文でさえ実は英語原文に集約されていることもありえる)ので、意訳しすぎとか「そんなこと書いてないじゃないか」というほどでもないのです。むしろ、クライアントによっては、案3以上にもっと自由な言い換えを求められることもあります。機械翻訳には、こうした言外のメッセージや、どんな風に伝えたいかといったクライアントの希望まで映し出すことはできません(ただここまでいくならクライアントからのこういう希望がある前提ですし、場合/相手先によっては申し送りないしBT(Back Translation)を出すこともあります)。無論、この3つもあくまで1文からみた例にすぎません。今回はお手伝いの中で1文を抜き出した例を挙げているので、本来は文章全体で考える必要があります。引用元の文章全体で訳していくと、前後の文脈から案1あたりの無難な感じに着地するかもしれませんし、あるいはもっと異なる表現(ただし、原文のメッセージを伝えるという点は押さえること)を提案できるかもしれません。これは人間翻訳ならではの技、機械翻訳の立ち入れない分野だと思います。

機械翻訳はとても便利なツールです。私はたとえば中国語ができないので、台湾旅行の時は重宝します(次は香港や上海、瀋陽とかに行きたいです!)。少しかじった韓国語やフランス語でも、日常会話を流ちょうにとまでは難しいので、出張時に何かと世話になっています。ただ、仕事で使う場合には、使い方が肝だなと思います(使い方についてかくかくしかじかは、是非冒頭の三浦さんの発表資料をご覧いただきたい)。また、求められるのが大意であって訳文にまったく精密さを求められないということであれば、いまや人間翻訳に依頼する必要はなく、無料の機械翻訳サービスで十分なこともあるでしょう。また、人間翻訳には人海戦術を取り入れた場合は別ですが1日にできる量には限界がありますから、時間的制約などの事情により、機械翻訳を使うことも一つの選択肢です。翻訳を必要とする人の求めるものは一様ではありませんので、機械翻訳を選択されること自体を否定する気もありません。とはいえ、私が仕事に機械翻訳を使うことは今のところありませんし(必要性がないし、むしろ手直しに余計に時間がかかり非効率)、人間翻訳例として先に挙げたような訴求力のある文をお求めのお客様には、是非Sprachgetriebe Consultingを頼っていただきたいなと思います。

フリーランスの終活と備え

※湿っぽい話をたらたらと書き連ねているつもりはなく、個人的には備えあればという趣旨でまとめているのですが、話題は暗いので、苦手な方は目についてしまったらどうぞ流してください。

家族も書くことをいいよと言ってくれたので。久しぶりのブログ記事がこの話題というのもあれなんですけど、県外の看取介護施設に入所していた祖母が、実は今年の1月末に、新型コロナが原因で亡くなりました。1月上旬に入所先でクラスタ感染発生。ほかの患者さんに陽性反応が確認されたそうで、直後のPCR検査では祖母は陰性と診断されたらしくほっとしたが束の間、その4〜5日後に高熱が出てもう一度検査すると陽性が判明。翌々日には専門の病院に入院。1月25日頃にこの1〜2日が山だと言われ、それもその後連絡がなくなったので持ち直してくれることを願ったのですがやはり90代高齢の体力がない祖母に高熱は辛かったのでしょう、1月29日に亡くなりました。新型コロナが原因による芸能人の訃報でもテレビで言われてましたが、ほんとにそこからあっという間なんですね。原因が原因ですし(今は新型コロナ以外の理由でも自粛されるところが多いと思いますが)お通夜も告別式もできず、翌朝30日には火葬。31日には遺影の写真やらなんやら用意して2月1日は葬儀でした。慌ただしい4日間でした。

昨年のはじめに、新型コロナが広がり始めた頃から、その介護施設は入所者への面会訪問を控えるよう呼びかけており、それまで毎月会いに行っていた母と僕は結局1年間祖母と会うことができていませんでした。コロナ禍だから。祖母には介護施設の職員さんが説明してくれたとのことで、僕らは元気だけど、会いに来れないんだよと言うとウンと頷いていたと。90代でも認知症らしい風もなく、行けば僕らのことをわかってた祖母でも、なんで会えないのかほんとに理解してたのかはわかりません。最後の数日は、高熱で苦しくて、独りで心細かったろうなと思います。入所者の親族が面会に行かなかったからこれまでこうした問題が発生しなかったともいえるのですが、会いたくても会えないという状況が一年も続いて、結果これかと思ってしまっている自分がいます。もう半月が経ち、家族も僕も悲しいかなだいぶ気持ちは落ち着いてきたところです。

話は変わって、仕事のこと、2/1が納期の大型案件に昨年12月末からずっと取りかかっていたんです。1月はスケジュール詰め詰めでとても忙しかったです。小さいのもそこそこに受けながら。はい、納期直前だったんですよね。1月末の手持ちは大型1件、小型3件。訃報が届いた金曜日から毎日普段より夜遅くまで時間作ってなんとか納品できましたけど。在宅仕事は時間が作れるだろうと周囲の期待は重く、また母も叔母も車を運転できない、兄は仕事の立場的に休めない、となると必然的に僕が動かざるをえないわけで、同業者はみなさん僕のこの4日間がどれだけ混沌としていたか、察してくださるかと思います。(文字通り)大変でした。常々、人生いつ何が起きるかわからないと考えているとはいえ、いざ起きるとなかなかに焦るものですね。病院、火葬場、葬祭業者、お寺、移動時間や現地滞在時間、帰宅時間を計算して何日に何時間取れる、それでこの日はこれ納品してという計算をずっとしながら大型を納品し終えるまで気が気じゃなかったです。

今回、母と連携が取れていたから4日間段取りよく、することをこなせたんだと思います。祖母は15年ほど前に一度脳梗塞で倒れたことがあり、その後に肺炎になってと、2回危ないときがありました。だからもう何年も前から、遺影の写真をある程度選んで、また葬祭業者の必要な書類、お寺でのお布施の金額など確認を済ませていたので、すでにまとめてあった必要な書類を母と確認し、僕が持っていって、と限られた時間内でも手続き自体はスムーズに済ませられました。

もう20年近く前に父が亡くなったときは、父方の叔母がすべてしてくれたので、母と僕にとってはじめて自分たちでする一連の手続き。葬祭業者の方々がみなさん良い方で、とても頼りになりました。祖母は冠婚葬祭業のこの会社で会員になり少し積立をしていたので、たとえば兄の結婚式などでもですが、そこと時々連絡をとっていました。今回のように、相談できる先を”あらかじめ”用意しておくことがどれだけ大切かと思わされました。火葬手続き代行や葬儀、お布施など、大金がかかります。不幸の中でよかったことは、急に◯◯◯万円なんて用意できませんから、少し前から家族で話をして積立を再開していたことです。これが積立がないばかりか、相談先も決めていなければ、1月末から2月はじめにかけての数日間は「『葬儀業者選定+お寺相談+金銭用意』葬儀手続き+納期=???」想像するのも怖いくらいです。

2月1日はお寺での葬儀も終えて帰宅して最終確認後に仕事も納品を完了しました。まだあと役場関連の諸手続きが少し残っていますが、今はコロナ禍ですぐにできないこともあり通常の一定期日とは異なり、手続きを担当する事務所との相談で3月にすることになっています。ちなみに役場での諸手続きについては、葬儀の手続きからその後に役場に連絡を取る時点で、何をいつまでにしないといけないのか葬儀業者と役場の方が細かく丁寧に教えてくださいました。この2週間、少しずつ言葉を整理しながら書き溜めて、今ようやくこの記事を書き上げました。余裕のない詰め詰めの仕事はしてはならないと実感(体感)しましたし、今後また何かあってもいいように必要な書類を用意してすぐわかるところで保管、そしていつかくる次の時のために金銭もまた積み立てていかないとなと考えています。そして混沌とした数日を過ごす中で思い出したことがあります。数年前に、翻訳者向けの集まりで終活をテーマにしたプレゼンがありました。僕は時間的に都合が悪かったので当日聴講できなかったのですが、イベント参加者はその資料にまだアクセスできるので、先週末に時間を取って読ませていただきました。たぶん二回り上の方かなと思うのですが、第二の人生(いわゆる定年後くらいの年齢を迎えたあと)の時間の過ごし方と、その資金積立計画などについて触れられていました。一部の積立例(小規模企業共済)は僕も昨年から(ようやく)始めているものでした。たまたまセッション前に一緒に会場に向かったのですが、そうした話をするんだと直接ご本人から聞いたことを覚えています。

その方の資料からの抜粋ではありませんが、自分が今している小規模企業共済の積立以外に今回のような出来事にも対応できる目的別積立は大切だなと思います。以下はその例です。

  • 小規模企業共済
  • 個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」
  • 積立型(貯蓄型)生命保険
  • 国民年金/厚生年金(事業形態による)
  • 冠婚葬祭互助会
  • 固定資産(家やマンションなど。不動産投資でも?)
  • +余裕積立(銀行の貯蓄・定期預金など)等々(もう少し勉強して追記したいと思います)

上記例で僕がしているのははじめの4件と余裕積立だけです。でも上4件は老後に備えてで今何かがあって出せるものではないので(解約するか、積立型生命保険は一応出せるけどそれでは意味がなくなる…)、万が一に備えてというには心もとないです。余裕資金の積立額を増やす手もありますが、はじめから目的別に分けて積み立てておいたほうが使途を明確に分けられてよいと思います。また、記事のタイトルにもあるとおり、個人事業主のフリーランス翻訳者だから別で退職金があるわけもなく(だから小規模企業共済などを積み立てる)、また働けなくなった場合に雇用先が保障してくれるということもありません(上記一覧にはいれてないのですが、今はフリーランスも働けなくなったときの保険があるんですよね)。だからこそこうして、様々な積立をしておくリスクマネジメントも大事だと考えます。日々の仕事や受注レート、月々の稼ぎの話ばかりではなくて。

あと、こうした資金積立とは別に、身辺整理も。僕の一番の問題は、このサーバー契約の解除かなと…ドイツのプロバイダと契約してるので、万が一僕が急死したら誰がどうやって契約解除するんだとか…(遠い目)。一度、諸々ある契約や所有物が何か、その関連手続きも整理しようかと。

僕は今年37歳になります。この文章を読んでる人は、まだ若いのに何言ってるのって思う人もいるかもしれませんが、もしかしたら次が自分かもしれない。たとえば巻き込まれ事故だとか、世の中いつ時も何があるかわからないものですが、今はコロナ禍もあってなおさらわかりません。決していつかくるときを悲観しながら仕事に明け暮れる日々を過ごすわけではありませんが、常日頃から備えることは大事だと思いましたし、仕事にプライベートに一日一日を大事に使いながら過ごそうと改めて思いました。

フリーランス翻訳者の消費税申告云々

久しぶりの記事投稿。記録と参考に。昨年の確定申告額を基に消費税課税事業者手続きが必要となるのではと思い、諸々調べて手続きをしてきました。

※2023年2月14日付けで簡易課税と原則課税の選択について追記をしています。これについては記事末の追記をご覧ください。

課税事業者の基準と疑問

国税庁のウェブサイトには、ある事業年度で課税売上高が1000万円を超えると翌々年度の消費税課税事業者になると書いてあります。私の場合は毎年8-9割方が欧米への納品で、欧米の発注者視点では国外取引(私)に消費税を払う必要はないので、私は消費税を預かっていません。そのため、その売上分がここでいう課税売上高にあたるのだろうかという疑問が湧きました。ネットではぼんやりと触れているものの、なかなかこのあたりを具体的に説明している情報が出てこない。これか!というものもよく読むとその先の話を説明しているようで求めている情報ではないようです。確定申告を終えた3月にちょっと気にはなったものの、コロナ禍で外出も控え気味(わかったら速やかにとあるけど、勝手に)まぁ今年中に出せばいいだろうと謎の自信をもって結局税務署に相談しに行ったのは10月。調べるなかで見つけた税理士さん数人のウェブサイトに海外納品については消費税を納める対象にならないとあったので、とりあえずそこまでの情報をもって相談に行きました。

海外事業者への役務提供は国内取引?国外取引?

先の税理士さんのウェブサイト情報もあるし国外取引なんじゃないの、決まりでしょという頭で税務署を訪問。その時対応してくださった方の説明だと国内外云々のところは特に触れられず、海外に納品してるからそれは課税されない。だから課税売上高に含まれないので(実際は国内取引で課税ですが、それは後述)、1000万円に満たない。それでも課税事業者になる場合は、消費税課税事業者選択届出書を出すのだと。また、預かっている消費税より経費で払ってる消費税の方が多いから還付されるはずと言われ、ただ間違いがあってもいけないので一度中で確認したいからと特にその日は何も提出しませんでした。すると後日電話が。

担)先日のお預かりした話を内部で確認したところ、国外に納品した役務も国内取引なので、消費税を納めることになります。
私)えぇっ!?でも消費税受け取ってませんよ??納めるも何も預かってないのに納められませんよね?
担)内税として…
私)いや、だから預かってないんですって
担)じゃ先方に消費税を請求してください
私)?!!!(↑できません)
(多少表現に違いはあるかもしれませんが大げさな脚色一切なし)

電話での押し問答の末、電話口の担当者の方も、預かってない消費税納めるよう言われても私の立場になったら納得できないですよねーという流れでもう一度確認してもらうことに。私の方でもさらに調べてみたところ、次の説明が国税庁ウェブサイトにあり、このことを伝えて再確認をしていただきました。

結果、日をおいて、「海外事業者への役務提供は国内取引になるが、免税対象となるため、かかる国外売上の消費税は免除される」(2020年10月12日現在)という最終判断の電話がありました。後日税務署を訪問し、担当者さんに対面で上記判断を再度説明してもらい、細かく確認してもらったうえで消費税課税事業者選択届出書を出しました。

(消費税課税事業者選択届出書は、課税売上高1000万円に満たない免税事業者も敢えて課税事業者になることを「選択」することができます)

ここでまた疑問が。結局この選択届出書にある課税売上額に書く金額は売上高合計?それとも海外分は差し引くの?免税の前にまず、国内取引(課税売上)であるかが判定されているため、税務署での説明は「国内事業者への売上高 + 海外納品分の免税対象売上高」、つまり国内外の翻訳売上高合計とのことでした

ここまで一つ一つのことが消費税法等の何条を根拠にされるのかが不明で納得がいかず悶々としていましたが、最終的には「消費税のあらまし」に丸っと書いてあったんです(全部書いてあった…3月の時点でここにたどりつけていたら… orz)、個人的に抱いていた疑問はすべて解消され手続き完了となりました。

消費税還付申請手続き

事業主は、預かっている消費税と支払った消費税の差分を国に納めます。でも上述の通り私はほぼ預かっている消費税がなく(課税取引だが免税)、経費で支払っている消費税の方が多いので、差分が還付されます(重要な参考:No.6205 非課税と免税の違い)。e-Taxでも還付申請手続きできるそうで、思ったより気分が楽です。※1

適格請求書等保存方式(インボイス制度)

「令和5年10月1日から消費税の仕入税額控除の方式として、適格請求書等保存方式が導入されます」なる消費税関連の新制度。個人事業主はこの登録を済ませてないと令和5年10月1日以降消費税を請求できません。そしてその登録には課税事業者になっていないといけないという前提条件があります。時期が近くなったらまた話が変わっているかもしれませんし、来年か再来年かに記事にしたいなと思います。

参考)コラム≪適格請求書等保存方式の導入について≫

おまけ

課税売上高が1000万を超えると知り得たら速やかに、というのは事業年度が終わってまとめた時点ではなく、日々帳簿をつけてそうなった時点でということだそうで、私みたいに確定申告でわかったというのもほんとは遅い話(と言われたんですが、でも届出書には基準期間の確定売上高を書くので、実質基準期間の売上記帳が締まってないと現実的に無理では?いや、まぁ12月末にぎりいけそうですけどさすがにそれは…)。課税事業者となるのは、課税対象期間(1000万円を超える事業年度)の翌年度からなので、たとえば2020年のどこかで届け出しても、その翌年2021年度から課税対象、消費税申告をするのは2022年3月に2021年分を。2020年は届け出ただけで課税事業者ではないため2021年3月に2020年分の消費税を申告することはできないとのことです。なので、本来は、2019年の年末までにきちんと売上高を把握して申請も済ませて、2020年に課税事業者となり、2021年3月に消費税申告をするのが正しいという…ここはやはり基準期間の売上高が確定していなければ書けないと思われます。要税務署確認)。そっかー、そんなすぐ還付してもらえないか…と思ったんですが、届出書ではなく選択届出書を出す場合はこの申告期間を1年ではなく1か月ないし3か月ごとという「選択」もできるそうです。なので、2020年中に選択届出書を出して、さらに3月毎申告に期間変更をしておけば、2021年1〜3月の消費税申告を同年5月31 日までにすることができます。ちょっと早く還付を受けられます(ただし、2年縛りがあって、2年経つまで申告対象期間を3月から1年に戻せません)。私にとってのネックは…、毎月ちゃんと売上と経費を帳簿につけること。

ややこしい…色々質問攻めをしてしまいましたが、昼休憩前に色々細かい男に小一時間付き合ってくださった職員さん、ご丁寧にありがとうございました。

――――――――――――――

注)本ページに掲載している国税庁ウェブサイトへのリンクはすべて2020年10月21日現在のものです。これ以降、リンクが無効になっていることもありますのであらかじめご了承ください。上記はすべて、あくまで参考に留め、常に最新情報をご自身で確認していただくか、または所轄税務署ないし顧問税理士に相談されることをおすすめします。

2021年1月22日追記:今年も、確定申告の時期が近づいてきましたね。日本翻訳連盟(JTF)のJTF翻訳祭で以前、「翻訳業を営む個人事業主向けの適正な会計処理について」と題してフリーランス翻訳者向けに帳簿処理の話をしたことがあります。翻訳業をはじめて帳簿処理でお悩みのかたの参考になればと、当時の資料を公開しています。資料のダウンロードはこちらの以前の記事からどうぞ。

2023年2月14日追記:※1 消費税還付は原則課税を選択した場合にのみ受けられます。海外取引が主で預かり消費税より支払っている消費税の方が多くて還付対象となる事業主の皆さんは課税制度の選択にご注意ください。簡易課税はみなし仕入れ率を使用するため消費税の計算が楽という特徴がありますが、消費税課税事業者届出書を出す際に簡易課税を選択してしまうと、還付は受けられません。原則課税を選択している場合にのみ消費税還付を申告できます。インボイス制度の開始が近づき、同業者間で簡易課税と原則課税の話も上がるようになったため、追記してみました。ちなみに、私は税抜経理方式を採用し、普段の仕訳で売上や経費と消費税とを区分(仮払消費税・仮受消費税)しています。ただ区分して記録するだけの話なので、帳簿処理を普段からご自身でしている人でも正直これまでとそんな手間は変わらないかと思います。(簿記や細かい作業が好きという性格が前向きにとらえているのかもしれませんが…。あと、ざっくり計算するより細かい数字がでて自分の中でとてもすっきりしています…)

2020年を迎えて。振り返りと抱負

前回の記事公開から半年も経ってしまいました。2019年3月末に前職を退職し、4月から在宅翻訳。コツコツと積み上げていたもののおかげで、無事新年を迎えることができました。フリーランス初年度は、適度に忙しく、仕事にプライベートに充実していました。

新年といえば、ここ7-8年くらい続けていることがあります。それは漢字一文字抱負。もっと前の職場から続く、仲間でもあり友人でもあるお姉さま方と年始にポットラックパーティで集まって食事や会話を楽しみつつ、新しい年の目標を立てています。昨年は「結」。「新しい人生のスタートに立つ2019年、初年度だからこそ、納得の行く結果をしっかりと出す」というのが私の抱負でした。家族のことでも病気など大変なことがあって時間繰りが難しい中で、まだ確定申告まとまってないけど、概算で前年比(対2018年)+20%という結果になったので、納得の行く結果を出せたと思います。

2020年の抱負は「続」。継続というものは何より難しいことだと思います。健康のために筋トレ(…orz 継続…)、時間を捻出して読書や勉強(…自重)、部屋の掃除…あ、いや、仕事でも、昨年できたことを今年も続けて達成するというのは案外大変なことですね。地道に昨年した活動を振り返りつつ、まずは昨年の売上を続けて達成、そして新しい顧客獲得や仕事の回し方改善を行いながらさらに上を目指して日々仕事に一層勤しみます。健康に気を遣って食事面で支えてくれる家族、一緒に仕事をしている仲間、お世話になっている同業者の方々や取引先の皆さんへの感謝を忘れず、今年も頑張ります٩( ‘ω’ )و