個人事業主が住宅ローンを組んだ話

突然ですが、マンションを買いました。といっても現金一括払いなどできるはずもなく、住宅ローンを利用して、ですが。大きな買い物にローンは…と考える方もおられますが、まぁそれは人それぞれの考え方なので。私は自分のことだけを考えればファミリー向けの物件は買わなかったかもしれませんが、自分にできる最高の親孝行ができたので最善の決断をしたと思っています。

さて、ブログは久しぶりですが、今回は個人事業主の住宅ローン、そして契約その後の諸々について体験したことを書いてみます。よく、個人事業主は住宅ローンが通らない、あるいは、通りにくいから専業になる前に雇用先がある間に住宅ローン契約する方がいいなどの話を見聞きします。後者は実際に多くのケースで堅実な行動なんだろうと思います。ただ、もしかしてこれって金融機関との確認不足も原因としてあるんじゃないかなと思わされることがあったのでこうして記録してみる次第です。

住宅ローンは大きな借金です。借金せずに現金一括で買えるなら金利も払うこともないしいいですよね。でも、どの家庭もがそうできるわけではないし、色んな事由でローンを利用して購入する判断に至る人もいます。私も自分が自己所有マンション欲しいというより、親の願いを叶えてあげたいなという方が強く、それにはこの方法が一番でした。で、個人事業主という現在の状況で住宅ローンを組むことになったのですが、実際検討から組み終わるまでどうだったの?と興味のある人は多いんじゃないかなと思います。そんな人の参考になれば何よりです。

尚、この記事は、別に住宅ローンを勧めるつもりはなく、組みたいとすでにお考えでそれでも審査ってどうなのかなと考えている個人事業主の方の気になる点の解消に少しでもお役に立てたらなと思って書いています。また、金融機関やその担当者から内部の事情・決まりを細かく聞いた話ではなく、あくまで体験談であるため、ここで知り得た話を引き合いに出されても必ずしも結果や反応が期待通りに進むとは限らない点にご注意ください。

実は一回落ちた

ぶっちゃけますが、本当のこと。うちの家は決して裕福ではなく、お恥ずかしい話結構金銭面でかなり厳しい時期が何度もありました。それでも家族皆で何千もあった債務をだいぶん減らしましたし、私自身年収も決して少なくない、これなら大丈夫だろうという状況になってから不動産屋に言われるがままに挑戦してみたんですが、あえなくお祈りされてしまったのが一回目の住宅ローン申し込み。その時は自分には物件購入は縁はないのかなー、あと個人事業主ってやっぱり不利なのかなーって思ったんですが、それからまた2年越しに別物件で住宅ローンに申し込み、本審査に通って購入に至りました。

月々の見込み返済額の申告

2回目に挑戦したとき経由した金融機関は、不動産屋が勧めたところとは別のところにしました(不動産屋は地元の伝手のある金融機関を推してきますが)。でも、できる限り通る可能性を大きくしたいなと色々調べました。個人事業主に優しいとか、マンション契約前に本審査までしてもらえるとか。で、そうしてコンタクトしてみた金融機関に送ってもらった書類を見た時に、「アレ、これってもしかして前に一回落ちた要因にあたるんじゃないかな、個人事業主にはそもそもロジックが不利なんじゃないかな」と思う事項がありました。それは月々の返済額。

ネットで調べると、

  • 月々のローン等見込み返済額が月収の35%を超えると通らない(というか審査段階に話を進めてくれない)
  • あるいは、30~35%あると審査が通りにくい

などの情報が出てきます。

その時に使用する月収計算根拠は、確定申告書の欄で言うと「所得金額等」の合計です。「収入金額等」ではありません。

一方で一回目に落ちた時には事業用カードの平均支払額も含めて申告するように言われました。アレ?って思いません?事業用カードの支払は経費なので所得金額から払っているわけではなく収入金額から払ってるんですよね。所得金額を根拠にする場合、事業用カードが含まれるのはおかしいわけです。また、個人事業主は生活用カードよりも事業用カードの支払額の方が多くなりがちでしょうし、根拠に使用する収入のベース額と、あれば申告する債務の平均支払額のカテゴリが同等でないのならそれは通りにくいのも頷ける話だなと。実際それがどこまで関係するのかは私には知る由もありませんが、そんな疑問も抱けないほど住宅ローン挑戦一回目の時の不勉強を感じました。

で話を戻しますと、審査に通り住宅ローンを組めた二回目の金融機関には個人事業主に理解があるとネットで出ていたところを利用したのですが、そこの住宅ローン申請書に設けられている月々のローン返済額の記載欄がすでに生活費と事業用ローンで区分が分けられていました。その時点で個人事業主に対する意識が違うんだなと思ったのを覚えています。(※ただし、実際に事業用ローンを計算から省けるかは、普段の会計処理で経費に含まれていることが明確に分かる勘定科目が青色申告決算書に載っているかなど条件はありました)

一回目に落ちたところもその辺りをよくよく話し合えば前向きに検討してくれたんだろうか、と考えました。個人事業主で住宅ローンを組む方は、この点を金融機関の担当者さんに相談してみてもいいのかもしれません(金融機関の方針によるでしょうし、有効な話かは分かりませんが)。

手付金の用意はあった方がいい

折込チラシや電車広告などで物件情報をみていると、手付金なしのローン計算額とか手付金不要などと謳っている広告をみかけますが、そういうのはあくまで目を引く謳い文句でしかなく(特に個人事業主が?)ローンを組むなら手付金はあった方がいいと思いました。住宅ローンの対象外となる費用項目を差し引いた全額を住宅ローンで支払うことはできるそうですが、住宅+土地+諸費用を合計した総支払額の95%以上だったか、ある基準値から~100%までをすべて住宅ローンでまかなおうとするとローン審査が格段と厳しくなるそうです。

以下は住宅+土地以外の諸費用です。
(※私の場合です。人により異なるところは多々あると思われます。)

・登記費用
・住宅ローン火災保険
・住宅ローン地震保険
・団体信用生命保険(任意)
・住宅ローン振込手数料
・融資手数料
・住宅ローン保証料(あるところとないところがある)
・管理費・修繕費前払い(私の場合は3か月分一括)
・修繕積立一時金
・管理準備金
・固定資産・都市計画税
・金消契約 印紙代
・瑕疵担保保険料
・不動産屋契約事務経費
・不動産屋契約印紙代
・不動産取得税

この中に、上述の一部住宅ローン対象外の費用項目(20~30万円くらい)や、物件契約時に現金払いのもの(10万円くらい)も含まれていますが、全部でざっくり150~200万円でした(購入物件の金額によってもさらに前後するかと思われます)。ある程度手付金の用意があったことと、住宅ローンの借入額が総支払額の95%未満になる契約プランを金融機関から提案いただきそれを利用したのもよかったのかもしれません。

本審査を通った後の手続き

普通は先に住宅購入の契約(手付?)をしてそれから住宅ローンに相談だそうですね。でもそれでローンに落ちたら嫌だしなと思って、不動産屋に掛け合い、先に金融機関に審査の相談をして審査に通ってから物件契約をする流れで進めさせてもらいました(審査結果がでてすぐに不動産屋に手付金も払いに行ってとちょっと忙しかったです)。変則的な対応に先方には面倒をかけたと思いますが、こういうことは相談してみるものだなと思います。その後の諸々の手続きですが、私の場合本審査に通り物件契約したのが2月、物件自体は8月完成だったので審査後の決済は8月末になり、その手続きに必要な諸々の情報が出てくるのが7月だったので4か月くらいは何もなく宙ぶらりんでした。金融機関から紹介された火災保険の本契約のほか、司法書士事務所との登記手続きなど初めての経験でしたが、先方と連絡を取れるのが平日日中だとか、仕事で実印をもう持っていたのでその後の手続きは滞りなく進み、フリーランスの仕事はある意味都合よかったです。

ざっくりまとめ
  • 収入根拠と債務申告額のカテゴリの基準が同等か(特に事業用ローンの部分。※毎月のサーバー契約代や光熱水費、インターネット代、本や事務消耗品購入といったショッピング枠を含む)を金融機関に聞いて、計算根拠の必要に応じた練り直しを打診してみる
  • 物件契約からローンを組む(本審査に通る)までの流れは自分にとって不利ではないかを考える
  • 実印登録をしている(と単純にその後の手続きが楽です)
  • 審査を進めるにあたって強く言われた基準はやはりほか債務の月々の返済額が月収35%未満であるということ、30%以下でできるだけ少ないことが望ましい(物件の価格もピンキリなので、言い換えれば、選ぶ物件の購入額や暮らし方によっては事業用ローンを踏まえた情報をもってでも個人事業主でも十分に審査に通る。あと、開業届を出したという明確な判断基準から個人事業主を長く続けていると書けるとよりよい)
  • 金融機関選びも重要。個人事業主に理解がある、個人事業主の申込でも話をしやすそうなところ。
  • 手付金はある程度用意した方がいい。(4000万ちょっとの物件で大体150~200万円くらいは用意される購入者さんが多いと言われました。手付金の額は不動産屋と相談すればいいことかと思います。)
  • 銀行であれば、そこと取引があるか(口座を開設済みで入出金など利用があるか)も多少影響する印象を受けました(一回目落ちたところの言い回しがそういう感じだった)。

以上は、相談から契約、決済まで不動産屋や金融機関に相談してみたらいいのではと感じたこと、用意していたらいいよと思ったことです。

と、体験したことをつらつらと書いてみました。多額の債務を引き受けたわけですから、これからもしっかりと仕事をして頑張って返していきます(,,•ω•,,)و  以下余談はありますが(苦笑)、仕事部屋も作れたので現在の環境にはとても満足しています。

以下余談

で、無事引っ越しも終え、今は新居で生活しているのですが、こんなことってある!?と思ったことがあり…。住宅ローン云々はもう関係ない話になるんですが、新築マンション購入ってこういうことあるのかなと思ったことを書いておきます…。

カーテンがレールに合わない
全世帯向けの説明会で、光熱水インターネット保険以外にオーダー家具やオーダーカーテンなどの業者さんもきているのは気になっていたんですが、まさかの落とし穴。オーダー高いしうちは既製品でいいや、と入居後にレールの設置高さと長さを確認して近所と遠方両方の家具屋さんに行ってみたところ、見事にレールの高さと長さに合う丈・幅のカーテン“だけ”がない!!敢えてそういうレール仕様にしたの?と思うくらい見事にどこのお店でも合う丈・幅のカーテンが見つかりませんでした。結局、長めの既製品を買って仕立て直すことになったので、余計にお金がかかったか、オーダーした場合と変わらない額になったかもしれません。カーテンを探す労力だけ無駄にかかったので、この辺り不動産屋が教えてくれていたらうちもカーテンオーダーしたのになと思います。

備え付けた洗面台ドレッサーの不具合
内覧会で、仕様のとおりに出来上がっているか、傷や汚れなどの不具合がないか、見る機会はあります。が、目に見える箇所だけ入念にみてもダメだなと思ったのが洗面台ドレッサーの話。私も、家族に事前にアドバイスを受けて、気付いた箇所はそれはもうとにかく数多く指摘しました。傷・汚れ。でもまさか入居後に“え!?ここ開くの!?”という箇所がドレッサーにあり(内覧のときにそこの機能は教えてもらえなかった)、その開いたところの立て付けが悪いところがありました。私の確認不足ではありますが、ありとあらゆる開けるところはとにかく(聞いて)開いて確認しましょう…。一年点検のときに言ってみようかな。

第28回JTF翻訳祭登壇資料

今年も参加しましたJTF翻訳祭。.゚+:ヾ(*・ω・)シ.:゚+。

2017年は10分登壇に応募しましたが、2018年は思い切って一セッションまるまるお時間(90分)をいただき

「翻訳業を営む個人事業主向けの適正な会計処理について」と題して登壇してまいりました。

僕は訳に直結するような内容での登壇は自信がありませんが、もっと周辺の事務的なこととかであれば話ができるかなと思い今回は最近個人事業を始められた方向けに翻訳業に係る普段の会計処理について(僕も税理士や会計士ではないので)経験談を具体的に共有する形で話をしました。スライド自体はたくさんあったんですが、割と早く終わり、最後の方は質疑応答をたくさん取ることができました。たくさん質問もいただいたので90分ちょうどよく使い切れたと思います。

本日の登壇資料は本ブログにアップロードしていますのでこちらからダウンロードしてご覧ください。※単式簿記についても簡単に触れていますが、あくまで一例です。白色申告か、発生主義で処理をするのか、青色申告で条件に該当する場合には税務署に申告のうえ現金主義で処理をするのかなどで処理の仕方は変わりますので、不明な場合は税理士や税務署によくご確認ください。

来年、セッション公募があったら何をネタに話ができるか考えてみよう。

2018/10/28 追記:

セッションのとき、そういえば売上の記帳について役務の提供は請求日ではなく納品基準で計上と根拠も示して話し、売掛金の受け取りまで仕訳例に触れはしましたが、仕訳はどれも単一取引のみで複数取引を扱って説明しなかったのでここで一つ追記整理しておきます。

確かに納品日ごとに売上を計上しますが、小さな案件を扱うことが多い方は特に、請求をある程度まとめてするので、売上計上は一つ一つでも売掛金の受け取りは複数分をまとめて受け取りますよね。

このとき、先般の売上ごとにちまちま入金処理(売掛金が減って預金が増えるなど)を一つ一つ仕訳するのではなく、その日にまとめて受け取るので入金処理は取引先ごとに合計額を仕訳しても構いません。ただし、摘要にはどの売上分が含まれているかは明記しておかないとわかりませんね。オンラインソフトで摘要欄の文字数が制限されている場合は工夫が必要です。

以下例です。

1. 2018/10/1に12000円分の翻訳成果物をA社に納品した。
2. 2018/10/3に2000円分の翻訳成果物をA社に納品した。
3. 2018/10/14に150,000円分の翻訳成果物をB社に納品した。
4. 2018/10/17に30,000円分の翻訳成果物をB社に納品した。
5. 2018/10/29に200,000円分の翻訳成果物をA社に納品した。
6. 2018/10/31に上記納品分の請求書を会社別に作成し、それぞれ請求した。
7. 2018/11/10にB社から10月請求分の入金があった。
8. 2018/11/15にA社から10月請求分の入金があった。また、A社は振込時に銀行振込手数料324円が差し引かれている。
備考:両社ともに入金時に10.21%の源泉徴収が差し引かれていた。(小数点以下の切り捨て、切り上げ、四捨五入は先方によって異なります)

単式簿記(売上については原則発生主義。ただし現金主義を選択している場合、お金に動きがあった時だけ記帳。以下は現金主義での例) 

仕訳対象(上記例の番号) 日付 勘定科目 金額 摘要
7 2018/11/10

売上

事業主貸

180,000(入金)

1,838(出金)

B社10月請求分(10/14, 10/17納品分合計)
8 2018/11/15

売上

事業主貸

213,676(入金)

2,185(出金)

A社10月請求分(10/1, 10/3, 10/29納品分合計)

*売上値引(振込手数料分)324円あり。

※8の源泉徴収は元の214,000円に対して計算されると思われます。

複式簿記

仕訳対象(上記例の番号) 日付 借方 貸方 摘要
1 2018/10/1 売掛金 12,000 売上 12,000 A社納品
2 2018/10/3 売掛金 2,000 売上 2,000 A社納品
3 2018/10/14 売掛金 150,000 売上 150,000 B社納品
4 2018/10/17 売掛金 30,000 売上 30,000 B社納品
5 2018/10/29 売掛金 200,000 売上 200,000 A社納品
7 2018/11/10

普通預金 178,162

事業主貸 1,838

 

売掛金 180,000

(貸方も行ごとに

仕訳しても良い)

B社10月請求分(10/14, 10/17納品分合計)
8 2018/11/15

普通預金 211,491

事業主貸 2,185

売上 324

売掛金 214,000

(貸方も行ごとに

仕訳しても良い)

A社10月請求分(10/1, 10/3, 10/29納品分合計)

※1: 売掛金は大体補助科目に社名などを用いて細分化して管理すると思います(手記帳だと売掛金/得意先元帳とか)。A社・B社の入金日が同じ日になってもわかりやすいように別々に仕訳しましょう。

※2: 先方が支払う際に売掛金の支払いから銀行振込手数料を差し引く行為は色々な仕訳方法があるようです。[売上] がなかったとして処理するのではなく、[支払手数料] 勘定を用いて処理する方法もあれば、[売上値引] という勘定を設けて処理する方法など。消費税納税義務者の方はこの処理の違いに影響を受けるので特に注意が必要ですね。ここは税理士の方々は意見が分かれるそうで、相談される税理士によって違う回答があると思われます。まぁ、一番は居住する地区管轄の税務署に「答えて」もらうのがいいかもしれませんね、もちろん担当者の名前と回答日もメモして。でも僕は『厳密に言って自分が支払った』わけではない(受け取る前に差し引かれている)この振込手数料が [支払手数料] で処理されることに違和感がある(という意見もある)に賛成なので、[売上] から差し引くようにしています。日本は民法第485条で『別段の意思表示がない場合は』弁済に掛かる費用は債務者が負担することとなっているようですが、国内については僕はまだ振込手数料の負担はないかな。報酬の振込に際し手数料を差し引くとエージェントが契約書に明示しているところがあるんですよね、特に海外。海外は契約書の修正を主張することにあまり良い反応はされないと思いますが、国内はこの第485条のこともあるしそこを敢えて明示して受取人負担ってしてくるんでしょうね、「契約書読んだ?受取人負担って書いてあるでしょ」って。契約時に思い切って負担したくない旨を主張してみるのもビジネスの駆け引きだと思います。